展示構成
STRUCTURE

重要文化財 小袖 黒綸子地波鴛鴦模様(部分)

江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵

2章 京モード 江戸モード
江戸時代、第2代将軍徳川秀忠とくがわひでただの娘・和子まさこが入内すると、京都に移ったファーストレディのファッションに注目が集まり、きものの流行が京都から発信されるようになりました。その一方で、数多く描かれた「寛文美人図かんぶんびじんず」からは、島原や吉原にいた遊女がモードを牽引する役割を担っていたことがうかがえます。江戸時代中期には、尾形光琳のような著名な絵師に模様を描かせた小袖や菱川派をはじめとする浮世絵師たちの描く美人画がファッションに影響を与えるようになりました。江戸幕府が庶民の贅沢を禁じたことで、洗練・簡素をよしとする「いき」な美学も生まれます。京と江戸を中心に発信される、めくるめく流行の変遷をご覧いただきます。
重要文化財
小袖こそで 黒綸子地波鴛鴦模様くろりんずじなみおしどりもよう
江戸時代・17世紀
東京国立博物館蔵
腰部分を空けて弧を描くような躍動的なデザインが、町方の経済力を背景に寛文年間(1661-1673)に流行。大胆に孤を描く網干あぼし模様は、波のようにデフォルメされ、また筍のようにも見える、遊び心を感じさせるデザイン。
後期
小袖こそで 白綸子地滝菊模様しろりんずじたききくもよう
江戸時代・17世紀
千葉・国立歴史民俗博物館蔵
岩間からほとばしる滝が落ちる先は何故か植木用の高足台。その勢いとは無縁のように可憐に咲く菊の小花は刺繡で表されている。シュールで奇妙な模様は、江戸時代前期、寛文年間の衣装にしばしば見られる。
振袖ふりそで 白絖地若紫紅葉竹矢来模様しろぬめじわかむらさきもみじたけやらいもよう
江戸時代・17~18世紀
東京国立博物館蔵
江戸時代には現在のファッション雑誌に相当する小袖の雛形本ひながたぼんが多数、出版された。その中の1つ『当流模様とうりゅうもよう 雛形松ひながたまつつき』(元禄10年〈1697〉刊)に、『源氏物語』の若紫巻をモチーフにしたこの振袖とまったく同じデザインが掲載されている。
見返みかえ美人図びじんず 菱川師宣ひしかわもろのぶ
江戸時代・17世紀
東京国立博物館蔵
「師宣の美女こそ江戸女」と賞賛され人気を博した菱川師宣の肉筆美人図。師宣の生家は房州の縫箔師ぬいはくし(刺繡と金箔で模様を施す職人)であったことから、元禄モードをまとった当世美人を描くのは得意だったのだろう。この女性の帯結びは人気の歌舞伎役者、上村吉弥が始めた流行結びだった。
重要文化財 前期
振袖ふりそで 紅紋縮緬地束熨斗模様べにもんちりめんじたばねのしもよう
江戸時代・18世紀
京都・友禅史会蔵
熨斗のし模様そのものも豪華だが、熨斗の一筋一筋に施された友禅染の繊細な色挿しは、江戸時代中期における最高の友禅染の技術を駆使している。
後期
夏衣裳當世美人なついしょうとうせいびじん
白木屋仕入しろきやしいれ乗布向じょうふむ
喜多川歌麿きたがわうたまろ
江戸時代・19世紀
東京国立博物館蔵
有名呉服商のおすすめの夏衣裳を宣伝するために制作されたシリーズの1枚。喜多川歌麿が、このようなコマーシャル用の浮世絵を制作していたことは、ファッション業界における浮世絵の役割を知る上でも興味深い。